izumi-akie’s diary

画家・和泉暁絵の部屋

油彩絵画の画法....私が行き着いたところ いかにキャンバスの白を残すか


油彩絵画には様々な画法があります。
私は茶色の下地で全体を写真のネガの様に描いて、色を着色して行く(いわゆる「おつゆがき」)カマイユ画法をまず習いました。
その教室の先生は、「偉大な画家は全てカマイユ画法である。」と説明されたので、私は「ではゴッホもカマイユなのですか?」と伺いますと「もちろんゴッホはカマイユです。」と、答えられました。
しかし、何度も乾かしながら塗り重ねて行くカマイユを、一心不乱で描き、一日に何枚も仕上げて行ったゴッホが、使用していたとは考えにくいのです。

しかし、やはり私は最初に伝授されたカマイユを今になっても引きずり続けているところがあります。

別のアートスクールに移ると、最初の先生に直接画法を習いました。
特に下地を作らずいきなり着色していく画法です。

更に、その先生にお願いして、カマイユではない古典画法のうちの一つを教わりました。

まず、キャンバスにデッサンし、少し暗い色でデッサンを見分けられる程度に下塗りし、一番基本となる色を決め、ダンマルペインティングオイルとダンマルワニスを混ぜ、絵を床に寝かせて一気に、はけか、大きな筆(44号など)で、キャンバス全体を一色に塗って、メディウムを作ります。

そして、暫くダンマルペインティングオイルで他の色なども加えて行き、最終的にはペインティングオイルスペシャルで、着色して、艶やかすぎるメディウムを落ち着かせて行きます。


これらの絵はその画法です。(但し、最近これら絵をストリッパーで削ったので、一部キャンバスの地が出ているところがあります。)

他にグレース技法やスカンブル技法。最初の先生にはたくさんの知識を頂きました。
今ではその点について、指導して頂いた、その先生にも心から感謝しております。

そして、現在の先生の受講生になって、ふと、「画溶液は何を使うべきでしょうか?」と伺ったところ、「テレピン(ターペンタイン)とスタンドオイルかリンシードを混ぜる事。」と、教えて下さり、私はようやくペインティングオイルから卒業出来たのです。

そして、先生は私に「あなたはデッサンしない方が良い。」と、おっしゃいました。
そこでちょっと、戸惑ったのです。(無論、デッサンを無視した方が面白いものが描けるという意味で仰ったのですが。)

やはりデッサンが無いと安定しません。

そこで私はいつの間にか気付いていた、テレピンの特性を利用し始めました。

テレピンで描いたものは乾かないうちに、テレピンで浸した布で拭くとほぼ完璧に消えてしまいます。

なので、テレピンをつけた筆で、まず、キャンバスにデッサンして、誤ったらテレピンで消して修正し始めました。

セザンヌなどがキャンバスの白を残す画法を取り入れていますが、ここの先生方は、とてもこれにこだわりがあるようで、私もこの塗られていない「白」を大事にし始めました。

上野の森美術館大賞展で入選したこの作品の犬のお腹などはキャンバスの地をそのまま利用しています。


この雪の部分は全て、キャンバスの地です。


この少女の服はキャンバスの地と絵の具の白で立体感を出しています。

それから私はまずテレピンで、大抵、茶色(別の色の場合もあります。)でデッサンし、それからテレピンとリンシードないしスタンドオイルの混合液で絵を仕上げて行く様になりました。

カマイユもまず茶色のテレピンで塗って行くのですが、私の場合、全体を塗ってしまわず、ただ、形を線などとして茶色で描き、上を仕上げて行くのです。